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       月読
淋しさの土

無口な朝が来て
スピーカーからのソニック・ユースはパチンコ玉のように消費されて消えてゆく
ねぇ 「ベルリン」っていう映画を観たんだ
つめたくて やさしくて 私には有り得ないような
現実的じゃないどこかの国の話
なのに 涙がでたよ

この土地には訪れる人もなく
私は土に水をまきつづけてく
いつか誰かが訪れてきたとき
あふれるほどの花で迎えるため
手のひらから時がこぼれおちてく
空に浮かぶ綿雲がくずれてく
眠れないほど 愛に沈んでく
花を咲かせないまま

不用意に用意された 退屈な時間の中でだけ
アリアの奏でる淋しさが 耳の奥まで響いてくるんだ

ライ麦畑であなたをつかまえて
二人で寝転んで流れる雲を見ていた
そんな夢くらい 見させてよ

突き抜けるほどの青空に
あなたに似てる色の風を捜す
いつか誰かが訪れてきたとき
あなたに似てる花で迎えるため
手のひらから時がこぼれおちてく
空に浮かぶ綿雲がくずれてく
眠れないほど 愛に沈んでく
土は乾いて行く

行くあての見つからない 想いを抱えている時だけ
シャガールの描く淋しさが 瞳の奥へと沁みこんでくるんだ

誰よりも真っ先に
伝えたいことがあります
誰よりもあなたに
伝えたいことがあります
まだ誰かを迎えるには早すぎるけど
私の土にも
小さな花が咲きはじめたんだ
小さなかわいい
花が咲きはじめたんだ


music by Takuhiro Nakamura

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