日本文学選集
檸檬
君のことを振り返る
笑顔とか 匂いとか
喋り方だとか
どうでもいいことばかり
とっておくことなんて
ないと思ってた
あの店はもう無いよ
路地で見かけた猫
夏に合わない花
そんなものもう全部
爆発してしまったんだ
もう君を愛しく思うことなんて
なかったはずなのに
もう僕は一人で君がいなくても
平気なはずなのに
さよなら さよなら さよならが言えないまま
どうしてかな 齧った檸檬がこんなにも苦い
君のことが大嫌い
会ったって そのたびに
仲違いばかり
どうして付き合ってたの
為になることなんて
ひとつも無かった
あの店はもう無いよ
終電のがした駅
国道沿いの朝
そんなものもう全部
爆発してしまわないで
もう君を愛しく思うことなんて
なかったはずなのに
もう君は誰かと好きなコートでも
探してるんだろう
さよなら さよなら さよならが言えないまま
どうしてかな 齧った檸檬がこんなに大きい
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