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       人体実験
呼吸

さよならの呼吸はいた
ちょっと無理した笑顔が
まぶたの裏

北風がつよくなって
そっと襟首すぼめた
冬が近いね
風がさむいね

鼻をこする夕陽が 誰よりもきれいで
永遠なんて ここにはないけど
永遠みたいに 記憶になるのかな

ふるえる手をのばした
翳った月が 両目で泣いてる
もう二度と逢えないな
かすった声で 僕はつぶやくよ
ひとしずく

悪いのは僕のほうで
ずっと世界はかわらず
構えている

帰り道 みうしなって
ずっとこれから この先
何処へ行こうか
風がさむいな

頬をなぞる記憶が 針のように痛くて
ショウウィンドウの ガラスに映った
白いつばくろ しばらく眺めてた

ふるえる手をにぎって
困った君が 両目をふせてる
もう二度と逢えないな
かすった声で 僕はつぶやくよ
ひとしずく

あしたが こなくても
雨が ふりそそいでも

ふるえる手をのばした
翳った月が 両目で泣いてる
もう二度と逢えないな
かすった声で 僕はつぶやくよ
さよならの
呼ぶ方へ




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