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       音のある断片
うたかた

浮き沈む笹舟から
送り灯の火がこぼれている
ほおずきの袖がぬれる
遠くで鳴っている囃子太鼓

今でも まぶたを伏せれば うかぶ 朧ろに
もう 繰り返せない やすらぎ 靜かに

さらさらと流れ行く 小舟にゆられて
遠くなる あなたの いない夏が来る
うたかたの声がする 蛍にゆだねて
この胸に 根づいた 日々が呼びかけてる

朝露の花びらから
ひとひら しずく こぼれおちる
蝉時雨 かき消すほど
繋いだゆびが 汗で滲む

今でも 思い出しながら ひとり 林に…
手を離れて割れた風鈴 ともしび

はらはらと消えて行く 花火の煙りが
目の奥に 届いて 涙 あふれでる
うたかたの声がする 命ある限り
この夏を 迎えて 生きることを決めた この胸に




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